はじめまして、「みんなの学会」主催団体、つくば院生ネットワーク(TGN)代表の讃井と申します。
私達が計画している「みんなの学会」のコンセプトについて紹介したいと思います。
私たちの所属する団体『つくば院生ネットワーク』(以降、TGN)は、つくばの開かれた研究発表・学びの場作りを目指して活動を行う学生主体の団体です。
2010年の発足以来、主に筑波大学の知見の発信をするために、先生や学生の様々な研究プレゼンテーションイベントや、わかりやすいプレゼンテーションをするための授業の企画、中高生から大人まで誰でも参加できるゼミの開催などを行ってきました。
(過去の活動等についてはこちらのHPをご覧ください)
そして今年度は、「学問分野や、理論—実践など枠組みや区切りのない、誰でも参加できる学びの場≒【みんなの学会】」を企画することになりました!
しかし…
学会ってなんでしょう。誰のための何のためのものでしょうか。
通常 “学会”は、学問分野ごとに分かれ(さらにいうと、その中でも専門ごと、立場・派閥ごとにもっともっと細かく分かれることもあります)、特定の領域に専門的な知識を持つ研究者を中心に集まり、研究発表を行い、学び合い、またそれを基に議論をしてさらに研究をブラッシュアップする場だと考えられます。
しかし、この学会に参加するためには様々な条件が必要です。
学会によって様々ですが、例えば
- 学会に入会しないと発表や参加ができない
- 学会に入るためには、推薦・承認してもらうことが必要
- 入会・所属・発表・参加と費用がかかる
といったことがあります。
なので、興味がある学会があっても、気軽に誰でも参加することは出来ません。
特に大学や研究機関に所属しない人はなかなかアクセスすることも難しいですし、また、研究機関に所属する人であっても、自分の担当教員や関係者が入っているものにしか入れなかったり、お金の問題で興味がある学会に十分に登録できなかったりします。
もしかすると、”閉ざされた” ”格式高い”という印象をお持ちの方もいるかもしれません。
しかし、研究をする人にとって学会は、新しい発見に出会うことができる最高にワクワクする場でもあります!
また、研究者は好きなこと・やってて楽しいことを研究しているので、実はとても楽しい場なのではないでしょうか。
そこで私達は、まず
①だれでも参加できる学会を創ってみたいと思いました。
この「みんな」とは研究者や学生だけでなく、
ちびっこも、おじいちゃんおばあちゃんも、普段は会社で働いている方も、海外から来た方も…誰もが含まれます。
また、研究は似たようなテーマのものであっても、その研究方法が違うと違う分野、違う学会で扱われます。例えば「来年度の経済の動きを予測する」といった場合にも、政治的な事象から語る人もいれば、過去の事例・海外の事例で語る人、膨大な過去のデータから予測式を作ったり、シミュレーションをして考えたりする人もいます。
別の角度から言うと、こうした社会に直結していると思われやすい研究をしている人もいれば、こうした人たちが使う事象を「記録する・読み解く」研究をしている人や、データを管理するためのソフトを作っている人、データを分析する方法論やその前提となる数学・数式の妥当性や論理について検討している人など、表には出てきにくい理論的な研究をしている人もいます。
このように、全く同じ課題に対して全く違う分野で検討されていたり、他の分野で得られた知見を前提として使っていたりと、研究は互いにつながり合っています。
そうした場合、隣接する異なる分野や、理論—実践の立場の異なる人同士で知見交換をすることで、新しい発見があったり、よりよい研究を思いつくことにつながったりします。
そこで、次に
②学問分野、理論—実践の枠組みを超えた学びの場を創りたいと考えました。
三つ目のコンセプトは、先に言います!
ずばり、
③自分達の手で創るです。
研究はこれまでの先人たちの研究・知見の上に成り立つものです。
なので学会にも、歴史や伝統がありますし、良い意味で「格式」があったりします。大会の組織委員会・運営委員会は誰でも簡単になれるものではありません。
ただ、私達が創ろうとしている今回の“学会”は、こうした学会とは少し異なるものです。
研究のための学会ではなく、研究者のための学会でもなく、「誰でも学ぶための、学ぶことを楽しむための、学ぶ場について考えるための」イベントとしての“学会“です。
自分を表す名札が何もなくても、知的好奇心に基づいて研究や学びを楽しむ。そんな場が「みんなの学会」です。
なので、私たちの学会運営委員会は、年齢、肩書、住んでいるところ、学んでいる事、得意分野、経験などに関係なく組織されています。
「学ぶこと、学びを楽しむこと、場づくり」に関心がある方であれば、だれでも、運営スタッフとして参加しています。
こうしたコンセプトのもと、 「みんなの学会」で、皆様と、純粋に研究や学びを楽しみ、またその成果を後世に残すことについて、真剣に考え抜きたいと思っています。
少し堅苦しい話になりますが、学術・ビジネス問わず、「π型人材(パイ型人材:2つ以上の専門を持っていたり幅広い知識を持っている人)」という言葉が注目されていたり、少し前にはリベラルアーツ教育に関する議論が活発であったりしました。
しかし、それを教育の文脈ではなく、アカデミックの中でどう扱うのかについてはまだ議論が必要で、具体的な手引きが整理されていないと認識しています。
複雑化する現代の課題解決に研究の立場から挑むために「どのような学びの経験をするべきか」については、特に、これから研究者になろうという私達の世代や、これからの世代にとって重要な問題だと思います。
既存の切り口や枠組みにとらわれない、未来を拓く研究の誕生を願いながら同志と共に、学びの場について考え、試行錯誤していきたいと思っています。