みんなの学会 「福祉」「科学」興味の壁を越える

第一回みんなの学会では、「手話パフォーマンス団体きいろぐみ」さんの公演を企画しています。
なぜ学会に「パフォーマンス」を呼ぶことを計画したのか、しかもなぜ懇親会ではなく第一部にについてお話しさせてください。

きっかけはTGNメンバーの一人から「つくばで手話パフォーマンスをやりたい」という提案を受けたことです。しかし、この提案を受けた時、正直はじめはぴんと来ませんでした。

つくば院生ネットワーク(TGN)は、学びや研究に関する活動を行ってきた学術系の団体です。論文も本も文字情報であり「耳で聞く」ことはあまりないので、科学と手話が結びつくということはイメージがつきませんでしたし、これまで手話でコミュニケーションをとる人と出会うことがなかった私は、正直その必要性も考えたことがありませんでした。

また、聴覚に障害を持つ方にも研究を楽しんでもらうという意味では、研究発表に手話通訳をつけることで、私たちTGNの「研究や学びを開かれたものに」という活動の目的は達成できるように感じました。

しかしメンバーの強い勧めもあり、まずは動画サイトで手話パフォーマンスを見てみました。

すると、高校生をはじめとし(鳥取県では毎年手話パフォーマンスの甲子園があります)沢山の人が、「伝えるということを伝えるために」魂からしぼりだすように、身体全体で言葉を紡ぎだすように、パフォーマンスをしている姿がありました

私もまたその頑張っている姿に感動し、手話が担ってきた役割についても考えさせられました。そこには研究プレゼンテーションをする上でも参考になる手話の言語としての表現力の豊かさもありましたし、サイエンスコミュニケーションはもちろん、全てのコミュニケーションにおいて重要な物事を伝えることの意味について、新しい発見がありました

筑波大学・筑波技術大学・筑波学院大学のつくば市内3大学の学生で集まって準備をしています。​​​​​手話ができても出来なくてもいつも大盛り上がりです!

TGNは10年以上、研究・学びを伝えるという活動をこれまでしてきました。

この10年で、サイエンスコミュニケーションの重要性が指摘され、認知も社会的からの要請も高まっているように感じます。

しかし、「なぜそれを伝えるのか」について、それをやっている学生自身は深く考え抜くことができているかといわれると、そうではないのではないかと思うことも多々あります。

そこで、これからはなぜ私たちは研究や学びを伝え合うのか、それ自体について考え抜く場をつくりたいと思いました。

そして、まずはそのきっかけを与えてくれた手話から、「伝える」ということについて学びたいと考えています。

しかし「手話」をテーマにすると、「福祉の問題」になってしまうのではないか。

これまで、手話や聴覚障害に関することは福祉的な活動が中心的に担ってきた背景もあり、「福祉の問題」としていてはいつまでたっても福祉に興味がある人にしか来てらえないのではないかと思いました。

一方、科学に関わる活動も「元々研究や科学に興味がある人」にしか、なかなかアプローチできないという課題もあります。

なので、多くの人に一歩、考えてもらう入り口を広げるために“パフォーマンス”が必要だと思いました。

また、今回「みんなの学会」はつくば市からのご支援をいただいています。

地域の活動として今回の企画を行うことで、まちづくりに興味のある方にも来ていただけるものと信じています。

今の時代は、個人が簡単に情報発信をすることができる時代なので、昔に比べたら聴覚障害を持つ人について知るチャンス自体はあると思います。

ですがそれと同時に、個人の興味に基づいて必要だと思われる情報はピンポイントで検索・収集されるようになり、また膨大な情報があふれるようなったことから、

元々興味のない、触れるきっかけのない情報は埋もれてしまうようにもなりました。

自分が考えてこなかったこと、触れてこなかったことを「他人事」にしたくはない、またそんな社会にしたくない。そんな願いをこの企画に込めています。

私自身がメンバーの強い思いや、パフォーマーの方の表現に心を動かされたように、

さまざまな興味の壁を取り払い、人々の心を動かし、大切なことを考えるきっかけにこの企画がなれると信じています。

みんなの学会 企画意図

はじめまして、「みんなの学会」主催団体、つくば院生ネットワーク(TGN)代表の讃井と申します。

私達が計画している「みんなの学会」のコンセプトについて紹介したいと思います。

私たちの所属する団体『つくば院生ネットワーク』(以降、TGN)は、つくばの開かれた研究発表・学びの場作りを目指して活動を行う学生主体の団体です。
2010年の発足以来、主に筑波大学の知見の発信をするために、先生や学生の様々な研究プレゼンテーションイベントや、わかりやすいプレゼンテーションをするための授業の企画、中高生から大人まで誰でも参加できるゼミの開催などを行ってきました。
(過去の活動等についてはこちらのHPをご覧ください)

そして今年度は、「学問分野や、理論—実践など枠組みや区切りのない、誰でも参加できる学びの場≒【みんなの学会】」を企画することになりました!

しかし…
学会ってなんでしょう。誰のための何のためのものでしょうか。

通常 “学会”は、学問分野ごとに分かれ(さらにいうと、その中でも専門ごと、立場・派閥ごとにもっともっと細かく分かれることもあります)、特定の領域に専門的な知識を持つ研究者を中心に集まり、研究発表を行い、学び合い、またそれを基に議論をしてさらに研究をブラッシュアップする場だと考えられます。

しかし、この学会に参加するためには様々な条件が必要です。
学会によって様々ですが、例えば

  • 学会に入会しないと発表や参加ができない
  • 学会に入るためには、推薦・承認してもらうことが必要
  • 入会・所属・発表・参加と費用がかかる

といったことがあります。

なので、興味がある学会があっても、気軽に誰でも参加することは出来ません。
特に大学や研究機関に所属しない人はなかなかアクセスすることも難しいですし、また、研究機関に所属する人であっても、自分の担当教員や関係者が入っているものにしか入れなかったり、お金の問題で興味がある学会に十分に登録できなかったりします。

もしかすると、”閉ざされた” ”格式高い”という印象をお持ちの方もいるかもしれません。

しかし、研究をする人にとって学会は、新しい発見に出会うことができる最高にワクワクする場でもあります!
また、研究者は好きなこと・やってて楽しいことを研究しているので、実はとても楽しい場なのではないでしょうか。


そこで私達は、まず
①だれでも参加できる学会を創ってみたいと思いました。

この「みんな」とは研究者や学生だけでなく、
ちびっこも、おじいちゃんおばあちゃんも、普段は会社で働いている方も、海外から来た方も…誰もが含まれます。


また、研究は似たようなテーマのものであっても、その研究方法が違うと違う分野、違う学会で扱われます。例えば「来年度の経済の動きを予測する」といった場合にも、政治的な事象から語る人もいれば、過去の事例・海外の事例で語る人、膨大な過去のデータから予測式を作ったり、シミュレーションをして考えたりする人もいます。

別の角度から言うと、こうした社会に直結していると思われやすい研究をしている人もいれば、こうした人たちが使う事象を「記録する・読み解く」研究をしている人や、データを管理するためのソフトを作っている人、データを分析する方法論やその前提となる数学・数式の妥当性や論理について検討している人など、表には出てきにくい理論的な研究をしている人もいます。

このように、全く同じ課題に対して全く違う分野で検討されていたり、他の分野で得られた知見を前提として使っていたりと、研究は互いにつながり合っています。
そうした場合、隣接する異なる分野や、理論—実践の立場の異なる人同士で知見交換をすることで、新しい発見があったり、よりよい研究を思いつくことにつながったりします

そこで、次に
②学問分野、理論—実践の枠組みを超えた学びの場を創りたいと考えました。

三つ目のコンセプトは、先に言います!
ずばり、
③自分達の手で創るです。

研究はこれまでの先人たちの研究・知見の上に成り立つものです。
なので学会にも、歴史や伝統がありますし、良い意味で「格式」があったりします。大会の組織委員会・運営委員会は誰でも簡単になれるものではありません。

ただ、私達が創ろうとしている今回の“学会”は、こうした学会とは少し異なるものです。
研究のための学会ではなく、研究者のための学会でもなく、「誰でも学ぶための、学ぶことを楽しむための、学ぶ場について考えるための」イベントとしての“学会“です。

自分を表す名札が何もなくても、知的好奇心に基づいて研究や学びを楽しむ。そんな場が「みんなの学会」です。

なので、私たちの学会運営委員会は、年齢、肩書、住んでいるところ、学んでいる事、得意分野、経験などに関係なく組織されています。
「学ぶこと、学びを楽しむこと、場づくり」に関心がある方であれば、だれでも、運営スタッフとして参加しています。

こうしたコンセプトのもと、 「みんなの学会」で、皆様と、純粋に研究や学びを楽しみ、またその成果を後世に残すことについて、真剣に考え抜きたいと思っています。

少し堅苦しい話になりますが、学術・ビジネス問わず、「π型人材(パイ型人材:2つ以上の専門を持っていたり幅広い知識を持っている人)」という言葉が注目されていたり、少し前にはリベラルアーツ教育に関する議論が活発であったりしました。
しかし、それを教育の文脈ではなく、アカデミックの中でどう扱うのかについてはまだ議論が必要で、具体的な手引きが整理されていないと認識しています。

複雑化する現代の課題解決に研究の立場から挑むために「どのような学びの経験をするべきか」については、特に、これから研究者になろうという私達の世代や、これからの世代にとって重要な問題だと思います。

既存の切り口や枠組みにとらわれない、未来を拓く研究の誕生を願いながら同志と共に、学びの場について考え、試行錯誤していきたいと思っています。

イベント等登壇情報 (2020/2/11 時点)

12月1日  日曜4限総合的な学習の時間【みんなの課外活動発表会】@Tsukuba Place Lab (讃井・青木)

12月1日 Friday Night Bridge @Tsukuba Place Lab
(讃井・福丸・青木)

12月7日  (一社)日本サイエンスコミュニケーション協会 年会
@三鷹ネットワーク大学 <「ユニバーサルな学びに向けた挑戦」>
ベストプレゼンテーション賞受賞

1月 KEKサイエンスカフェ @BiVi つくば(10日 讃井・青木)
(24日・31日 青木)

1月17日 つくば100人カイギ @up Tsukuba(讃井)

1月31日 ラヂオつくば「つくば You’ve got 84.2(発信chu)!
(青木・高木)

2月5日 ラヂオつくば「W@t’s? Tsukuba!」(讃井)

イベント参加情報

*手話サークル虹の雫クリスマス会

*手話教室&手話パフォーマンス講座の体験会

*いばふく超会議

*ボランティアフェスタ

メディア掲載情報 (2020/2/11 時点)

2020年1月8日 つくば経済新聞
つくばで全編手話通訳付きの「みんなの学会」 「さまざまな学問分野に触れてほしい」『Yahoo! ニュース(同日)』

2020年1月20日 朝日新聞
大学院生ら研究発表 手話通訳交え/つくばで2月

2020年1月22日 NEWSつくば
手話パフォーマンス招く資金を募る「みんなの学会」来月つくば開催で

2020年1月24日  つくば市民活動のひろば
<分野や障がいの有無を超えた学びを -つくば院生ネットワーク①>

2020年1月27日 つくば市民活動のひろば
<手話の楽しさをまずは知ってほしい! -つくば院生ネットワーク②>

2020年1月28日 つくば市民活動のひろば
<ほんとうの「科学のまち」を目指して -つくば院生ネットワーク③>

クラウドファンディング1ヶ月半の御礼

支援者の皆様、情報をシェアしてくださった皆様、陰ながら応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

今回のプロジェクトで、目標金額70万円に対して120%となる、851,000円のご支援をいただきました。収支につきましてはまたイベント終了後ご報告させていただきます。

12月中旬にクラウドファンディングをオープンして、不安も大きかったですが、今はそれ以上にみなさんの温かい応援の気持ちと期待を感じています。

さらに、クラウドファンディングを始めてたくさんの出会いがありました。ご支援者様がサイエンスカフェに来てくださったり、私と同じように手話にも科学にも興味があるといった方と出会ったり、始める前までは思いもよらなかったようなたくさんの方が応援してくださいました。

クラウドファンディングが終わった今、これまで以上にイベントを成功させたい!させなければ!という気持ちが大きくなりました。みんなの学会まであと2週間、気を引き締めて準備に励みたいと思っております。

引き続き応援よろしくお願いいたします。

手話=言語脳の科学【応援寄稿きいろぐみ代表南様より)】

今回、みんなの学会の第一部にてご公演いただく手話パフォーマンス「きいろぐみ」の代表、南さんが寄稿を書いてくださいました。

南さんはきいろぐみの立ち上げメンバーとして、30年間舞台に立ち続けています。いまでこそ手話パフォーマンスの団体はたくさんありますが、南さんが活動を始めた30年前は「手話パフォーマンス」という言葉はほとんど知られていなかったそうです。

30年間、手話という夢を配り続けてきた南さんが、今回のテーマ「手話から学ぶ、伝えるということ」にまさにリンクした思いを書いてくださいました。南さんの手話に対する思いを多くの方に伝えたいです。

「手話 = 言語脳の科学」
手話パフォーマンスきいろぐみ 代表 南 瑠霞(手話パフォーマー/手話通訳士)

(以下、南様より)

手話は、人間の言語脳の豊かさと多様性の証明。これが、私の手話に対する思いです。

 「手話はろう者の大事な言葉」だということは、常々多くの人によって語られ、また、それを学び現在様々な活動をさせていただくとき、私たち自身もそれを実感します。そんな中で、手話という言葉に取り組み、また、手話が一つの芸術ともとらえて、舞台からいかにその魅力を伝えられるかと、私たちは、日々いろんな思いを巡らせています。

今回の企画に参加させていただくにあたり、私が、お伝えしたいこと。それは、手話は、まさに人間の脳科学の証明だということです。

【聞こえなくても、つながりあえる】

 言語は、一般に一定の地域で生まれ、そこに生まれ育つ人、出会う人に伝達され、それがその地域の共通語になります。共通語が親から子へ、友人から友人へ、人から人へと伝えあい用いられれば、ひとつのコミュニティを生み出し、社会が生まれます。その輪に入れば、誰もがたくさんの情報を仲間たちと共有できます。

これが今の全世界の言語のあり方であり、日本語も、また日本国内各地の方言もそのように成り立っています。

手話は、聞こえない人たちの間で生まれ広がり、多くの人が共有し合い、意思や思いの伝達に使われ、人の心のつながりを生み出している点で、音声の言葉と同様の『言語としての働き』を持っていることは明らかです。 私たちは、手話が一つの言語であると認識する時代に入ったのです。

人は、豊かな言語を有した時点から、他の動物たちとは違う歴史をたどり始めた。とは、よく言われますが、手話は、人間が、耳が聞こえなくても、決して言語を手放さなかった証でもあります。手話は私たちに、人間には『聞こえなくても、まったく別の方法で言語を生み出す能力が備えられており、必ず人々がつながりあえること』を、メッセージしてくれているのです。

【手話という言語は脳が秘めた可能性】

 手話は言語

これが多くの人たちに認められていることは現在各自治体の「手話言語条例」が、300を超える勢いとなっていることからもわかります。

手話は、聞こえない人たちの間で生まれた知恵と工夫の結晶であり、時代と共にさらにその構造を豊かにしてきたものです。手話は、人が聞こえを失ってなお、目で見て手で語るという、これまでとは形態の違う言葉を生み出し構築できるという、人知と能力の証明です。これは聞こえない人の力であるとともに、人間が古来から、もともと持っていた脳の力そのものだと私は思います。

人間の言語脳は、実は耳と深く結びついているわけではなく、目や手を使えば、私たちの日ごろ使う日本語、または海外の英語や中国語などと同様に、十分に機能を発揮し、音声言語とは違う形で新たな言葉を生み出す可能性の種を秘めていたのです。

手話は、私たち誰もが持っている「脳」が生み出した言語。手話や聞こえない人々の存在はまさに、私たちの脳の可能性の証であり、私たちすべての人間の希望を示しています。 手話は、言語であり、言葉の科学そのものであり、人類の可能性。脳が秘めた能力自体の、証なのです。 

手話は、言語であり、言葉の科学そのものであり、人類の可能性。脳が秘めた能力自体の、証なのです。

【手話から学ぶ多様性】

 長い歴史の中で、聞こえない人々は、たくさんの偏見や差別にさらされ、少数派であるが故に、様々な誤解を持って見られてきた時代があります。でも、私たちの時代で、物事の見方を変え、それが豊かさに変えられるよう、努力したい

 そう思うとき、聞こえない友人たちは、私たちの人生のお手本であり、少数派がいかに社会の壁に立ち向かうべきかという社会的指針も与えてくれています

 今こそ、多くの聞こえる私たちは、手話と聞こえない人の存在から、学びたい。

手話は人間の言語脳の秘めたる力の証であるとともに、人間がどのような状況からでも新たな言葉を生み出して話して見せるという「多様性の証明」でもあります。これは、人間の言葉に対する、勇気と希望とチャレンジの実証です。

言葉は私たちの命であり情熱であり、出会いを求める声そのもの。

手話は、脳科学という側面から見れば神秘と奇跡と必然と、そして人間の人間たるゆえん。

そんな手話に出会い、取り組ませてもらっていることに、心から感謝します。

 私たちは、手話とろう者の立場から、多くの人に夢を配る集団。手話パフォーマンスきいろぐみ。聞こえるアナタもぜひ、聞こえない人たちの生きる姿から、勇気と希望と、そして手話のアートとしての豊かな夢をお受け取り下さい。

 当日は、皆さんにお会いできることを楽しみにしています。

2020年1月   南 瑠霞
(手話パフォーマー/手話通訳士)